カザフスタン日本友好協会
会長 岡田 素行
私たちが日本とカザフスタンの友好と協力を語るとき、必ず心に留めておきたい偉大な人物がいます。
それが、カザフスタンを代表する詩人・思想家・教育者、アバイ・クナンバイウルです。
アバイは十九世紀後半の激動の時代に生き、詩と思想を通じて民族の精神を目覚めさせ、近代カザフ文化の礎を築いた人物です。

彼は、学問と理性、誠実な労働、人格の陶冶こそが民族の未来を切り拓くと説き、多くの人々に学びと希望の光を与えました。
代表作『言葉の書』には、人としていかに生きるべきか、知識とは何か、社会とどう向き合うべきかが、静かな言葉で深く語られています。
そこに流れているのは、他者を尊び、自らを磨き、誠実に努力することの大切さです。
この精神は、時代や国境を超えて、今を生きる私たちにも変わらぬ価値を示しています。
またアバイは、プーシキンやレールモントフなどの西洋文学をカザフ語に翻訳し、自国の文化と世界の知を結びつけました。
彼は詩人であると同時に、文化と文明をつなぐ架け橋でありました。
この姿は、まさに現代の国際交流の理想そのものです。
伝統を尊重しながら新しい知を学び、異なる文化を理解し、人と人、国と国を結びつける。
そこからこそ、真の信頼と持続的な協力関係が生まれると、私たちは考えています。
日本とカザフスタンは、ともに文化を尊び、教育を重んじ、勤勉を美徳とする国です。
この共通の価値の上に立ち、私たちは文化・学術・産業の各分野において、末永い友好と協力を育んでいきたいと願っています。

アバイはこう語りました。
「誠実な労働、正しい心、深い知識――この三つが人を高める。」
この言葉は、私たちの協会活動においても大切な指針です。
技術や経済だけではなく、信頼、誠実、知性こそが、国際友好の最も確かな基盤であると信じています。
カザフスタン日本友好協会は、アバイの精神に学びながら、文化と学術を礎とし、産業と技術の協力を育み、両国の友好と発展に貢献してまいります。
このページを通じて、アバイという偉大な思想家の魅力と、その精神が日カザフ交流の未来を照らす灯となることを、心より願っております。

注1) 日本語版のアバイ作品集が初めて出版されました。
カザフスタン共和国の詩人・思想家アバイ・クナンバイウルの詩集・作品集が、日本語に翻訳された書籍として初めて出版されました。これはカザフスタン文化・スポーツ省がアバイの生誕175周年(2020年)を記念して企画されたものであり、主要10言語のひとつとして日本語版が制作されました。
注2) アバイの名を冠した施設や銅像などは多くの都市に作られている。
アバイ国立オペラ・バレエ劇場(Almaty市)
アバイ博物館・記念館
アバイ広場(Almaty)、アバイ通り(各都市)、アバイ駅(Almaty)

注3)
アバイ詩集・叙事詩・訓戒の書より
心に志なくば(詩集1898年)
心に志なくば
眠った夢は起き上がらぬ
知恵と理性を働かせねば
人は動物のように生きるのだ
知性が感情に勝らねば
深い智慧の底へは行けぬ
年をとって呆けたら
いつもの習慣を変えられぬ
身体の欲求を満たさぬと
心が落ち着くことはない
しかしそれが行きすぎると
もっと、もっとと期待する
身体の欲求を満たさぬと
心が落ち着くことはない
しかしそれが行きすぎると
もっと、もっとと期待する
理性と感情を欠いた
家畜にでもある命だけで
生きていくことに意味はあるか?
理想を持つことも無しに
大人になってからも自由になれず
心に志なくば
彷徨う私の跡を追うな
人々は私に従わず、自由にもさせてくれなかった
私を衰れんで、静かに眠らせてくれ
心の外側は無傷だが、中身はボロボロだ いつか死ぬだろう、何か貢献するでもなく 内に秘めた想いを詩にしたためるのをやめよう 噂話と世間話の種になるだけだ
身体の欲求を満たさぬと 心が落ち着くことはない しかしそれが行きすぎると もっと、もっとと期待する
理性と感情を欠いた
家畜にでもある命だけで
生きていくことに意味はあるか?
理想を持つことも無しに
人として生きる以上
無知でいるわけにはいくまい
民族、それが無知な今、
居場所をどこに得られるだろうか